王様、ルビーロマン
―― 仕事をする上での「宝」を、いつもお伺いしているのですが。
坂本さん:ぱっと浮かぶのは、やっぱりルビーロマンかな。「宝石に一番ちかい」って名前からもね。うちのぶどうは、もともとデラウェアが大半やったけど、今ではルビーロマンが大黒柱になってきとるね。
ちなみに、ルビーロマンの生産量は、宝達志水町が県内で一番ねんよ。
―― そうなんですか。知らなかったです。ところで、登場した頃から、「ルビーロマンってすごい!」という印象をお持ちでしたか?
坂本さん:10年前の初せりの時、うちの葡萄園でも、2本だけルビーロマンを育てとったんやわ。でも、全部しぼんでしまって商品を出せんかってん。そのシーズンに、高松の生産者のルビーロマンに10万円の価格がついて。あのファーストインパクトはすごかった。自分はここでデラウェアの作業をしとったから、「こんなチマチマと、なにやっとるんやろう」と思ったよ。他の生産者も、それで火がついたところはあるんじゃないかな。
―― ドラマチックですね。
ルビーロマンを育てるのって、やっぱり難しいんでしょうか?
坂本さん:今までにはない作り方をするんやわ。他の大粒の品種であれば、1本の枝に一房つけるところを、ルビーロマンは、3本の枝に対して一房しか残さん。房数を減らして、栄養をゆき届かせて、粒を大きく、甘くしとる。
出荷基準も厳しいしね。一房ずつ検査場に持っていって、上から下から横から360度覗き込んで、色付きや傷んだ粒がないか検査する。一粒の大きさも、20グラム、直径31ミリという基準が定められとって、基準を満たしてないと、検査は通らない。検査を通らんかったものは、業務用とか、加工用に出荷することになる。
あと、自分のこだわりで、種ありのルビーロマンを少しだけ作っとる。今では消費者の人も、種ありのぶどうを避けるし、種なしの方が安定して栽培できるんやけどね。
―― 種ありのぶどうのほうが、実は栽培しづらいということなんですね。
坂本さん:花が咲く4月の時期に気温が低いと種が入りにくいから、暖房やストーブを焚いて、ハウスを温めることもあるわ。種が入った粒は大きいんやけど、種が入らない粒は小さいから、種の入っていない小粒をハサミで切り落として、粒の大きさを揃えたりするしね。手間はかかるわ。
―― そこまでして、なぜ種ありを?
坂本さん:種ありのぶどうは、種が養分を引っ張ってくるから、本来のぶどうの味がすると思っとる。でも、出荷基準にあわせにくいし、手間がかかるし、他の生産者の人も、種ありのルビーロマンはもう作ってないと思うわ。これは、自分のこだわりやね。
宝石に一番近い果実、ルビーロマン。実がつまってはじけそう